Vol.7『住まいはマンション派?戸建て派?②』
『ツキノキ先生と語る 家さがし対談』
家探しを始めるにあたり、「何から始めたらいいの?」「いくら貯めたらいいの?」など、様々な疑問が浮かんできますよね。
『ツキノキ先生と語る 家さがし対談』では、長年宅地建物取引士として活動し、数多くのお客様とかかわってきたツキノキ先生に、家探し中、特に中古住宅をお考えの方に役立つお話や業界の裏話など、様々なテーマで質問してみたいと思います。
第2回→『広島市で子育てしやすいエリアはどこ?① 保育園選び』
第7回の今回のテーマは、『住まいはマンション派?戸建て派?②』です。
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前回の「マンションか戸建てか」という話の続きですね。
はい。前回は、まず自分たち家族の住み方、暮らし方を家族でしっかりと話をして、マンション、戸建ての暮らすうえでのメリット・デメリットを出して比較検討し、優先順位を決めて自分たちの住み方の方向性を決めましょうという事でしたね。
ただ、現実を見た場合、購入時にかかる費用と購入後にかかる費用の経済的な見地での比較検討も重要なポイントになると思います。
費用の比較は、つい購入時点での価格だけ見ていましたが、購入後にかかる費用も合わせて検討しないといけないんですね。
その通りです。まずは購入時の費用について比較してみましょう。
以前は「マンションは一戸建てより価格が安い」と言われてきましたが、街の中心やJR駅付近のマンション価格が上昇しています。
また戸建ては郊外のミニ開発団地が災害の関係で減り、大型団地開発も近郊で行われ、土地価格は大幅に上昇しています。人件費や建築資材の高騰もあり、近郊のマンション、戸建て共に新築物件は高額で推移しています。
また、中古マンション、中古戸建ては、郊外の物件が多く出てきて低価格となっていますが、築年数によって価格に特色があります。
特色?マンションと戸建てでは、築年数によって価格に違いがあるという事ですか?
はい、これは資産価値の差がマンションと戸建で異なっているからなんです。
不動産の資産価値は、土地の評価と建物の評価の合算で決まります。
近隣の土地開発状況等によりますが、土地の評価は概ね一定で推移し、建物の評価は築年数に応じて下がっていきます。
マンションは1住戸当たりの土地の所有面積が小さいため、土地の評価分はわずかです。一方マンションの多くで採用されている鉄筋コンクリート造では、50年と長期にわたり建物評価が続きます。そのためマンションは土地の価格の推移によらず、築年数により一定の割合で資産価値が下がっていくことが多いのです(下図1左)。
戸建ての場合は、土地と建物共に評価されますが、多くの戸建てで採用される木造では建物の評価寿命が25年から30年でなくなりますが土地の評価は継続します(下図1右)。
よって、売却するのであれば、10年~20年前後の資産価値の評価はマンションが高くなり、35年以上経過すると概ね戸建ての方が高くなります(下図2)。
中古住宅を購入する場合は、マンションは30年以降、戸建ては20年以降がお買い得になりますし、長く住むのであれば土地評価が継続する戸建が良いことになります。
建物の現状調査(インスペクション)が中古住宅にも行われるようになり安心して購入する事が出来るようになりました。
ただ、マンションは建替時の住民協議が高いハードルとなっています。
中古住宅は築年数によって資産価値も変化して、マンションと戸建で買い時が変わってくるんですね。
はい。それでは、次にマンションと戸建ての購入後の維持費で比較してみましょう。
費用の内訳は、固定資産税、火災保険料、修繕費(専有部・屋内)、修繕積立金・修繕費(屋外)、管理費、駐車場等となります。
最初の3項目についてはマンションと戸建共に必要経費です。
固定資産税は耐用年数の長いマンションの方が高くなりがちで、
火災保険料は新築マンションは耐火建築物のため木造の戸建の5~6割と安くなります。
修繕費については、屋内・屋外(マンションなら専有部分と共用部)に分けて比較した方が良いでしょう。マンションの修繕積立金は、あくまで共用部に関するものですから、専有部分(室内)の壁の模様替えや設備の交換費用は、別途修繕費として確保する必要があるためです。
マンション・戸建てともに専有部・屋内の修繕費はまちまちのため比較しません。
共用部・屋外で必要となる後半の3項目で比較してみましょう。
戸建ての外部の修繕には10年毎に100万円程度、掛けるケースが多いです。
仮に、マンションの場合で管理費が月1万円、修繕積立金が1万円、駐車場代が1台につき1万円とすると、
年間で最低でも36万円、10年で360万円、50年で1800万円となり、戸建との差額が10年で260万円、50年で1300万円となります。
共用部に1800万円!維持費ってそんなにかかるんですね。
簡単にマイホームと言っても、維持費を考えてから住宅ローンの支払いを決めないといけませんね。
そうですね、マンション、戸建共に、購入後の維持管理等の費用が発生することを考慮して資金計画をしないと、入居後の生活が厳しいものになってしまいます。
どちらかと言えば、マンションは販売価格以上に維持費が掛かりそうに見えてきたんですが。
戸建てと比較して、マンションは別途固定費として管理費・修繕積立金・駐車場代が必要なので、平均3万円としてローンで考えると35年で約1,000万円の借入を上乗せすることと同じと考えていいと思います。
つまり、35年で、2,000万円のマンションが3,000万円の戸建と同じ支払いになるということです。
マンションと戸建てでそんなに違いが出てくるんですね!本当に、販売価格だけでは比較できませんね…。
マンション派の主人の説得材料になりそうです(笑)。
前回のお話と併せて、購入費・維持費の比較をしながら話し合いたいと思います。
≪最後にひとこと≫
マンションと戸建は、新築はどちらも市街地近郊に集まっていて高額で推移している。中古の場合は、買い時が建物評価寿命により違うため築年数に注意する事。購入以降の経費がマンションと戸建で違うため注意すること。特に、マンションは住宅ローンの支払い以外に毎月、管理費と修繕積立金の支払いを計算して購入する事。それぞれの特徴を知って家族でしっかり話し合って住まいの方向性を決める事が大切です。
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